【書 評 よ り】
●『夜明けへの道』に収録されているデニス=バンクスの言葉を「過激」とみる人がいることは知っている。だがその中に、事実と異なるところが少しでもあるだろうか。すべて事実ではなかろうか。そうであれば、過激なのはどちらだろう。アメリカ政府がやってきた「詐欺」(デニス=バンクス)こそが過激なのだ。そんな過激な詐欺にだまされている「発見」派日本人などは、「過激な無知」とでもしか言いようがあるまい。――本多勝一「話の特集」93年2月号
●平和を愛する編集者たちの姿勢をも反映したのか、『夜明けへの道』に載せられた「声」のトーンは、深い怒りを秘めつつも穏やかであり、ある種の自信に満ちている。――弥永健一「月刊フォーラム」93年2月号
●アマゾンからアラスカまでのアメリカ大陸に住むネイティブ・アメリカン(先住民)の生の声を中心に、関わりのあった日本人、アイヌ民族のメッセージ、リポート、インタビューなど60編を収録した大冊。コロンブスがアメリカ大陸を発見して500年、それは先住民にとっては、西洋の侵略であった。それへの抵抗の歴史を綴る本でもある。近代文明社会への警鐘が詰まっている本で、エコロジー、カウンターカルチャーに興味のある読者には必読の書と言える。――「本の雑誌」93年5月号
●「私たちから盗んだものは、すべて精算していただきたい」「主権国家の宣言については、この半年に10の部族が宣言したのですが、全く報道されていませんね」「ナバホの人々の話や考えを、記録していきたい」。“あなたにとって五百年とは”――アメリカ大陸から寄せられたネイティブ・アメリカンを中心に、アイヌ民族などの生の声を集めたもの。「闘いの長い年月の後、今が、屈辱の五百年間、五百年間の夜の終わりを表しているようにみえます」。ノーベル平和賞を受賞したグァテマラのリゴベルタ・メンチューの言葉だ。「出版ニュース」93年3月下旬号
●「五百年」…何という歳月であろう。地球の年月から見ればわずかな時間かもしれないが、人間の罪という面から考えると、気の遠くなりそうな長い年月である。コロンブスのアメリカ大陸到来にはじまる影響は、南北アメリカ大陸だけの歴史の変化では断じてない。地球上のすみずみにまで波及し、そして現代という結果につながっている。日々エントロピーを増やしつづける人間の勝手な行為、今なお行われている侵略・戦いの数々、そしてなおも残る奴隷制。五百年前のことではなく、現在のことである。(序文より)「あなたにとっての五百年とは?」の問いかけに寄せられたそれぞれの声を聞き、込められた重いの深さと世界観の確かさに感動する。アイヌ民族やその他の土地の先住民族との関わりを自らの課題として抱えたい。――「話の特集」93年4月号
『夜明けへの道』
――はじまりの500年に寄せて
アメリカ先住民族は語る
【目 次】
前書きにかえて 掘越由美子 1
前 章
再考500年 Rethinking 500years―――――11
グレイト・スピリットが
あなた方を導いてくださいますように ロバート・スティード 12
詩 インディアンの声 レオナルド・ペルティエ 14
征服のパラダイム――支配者の世界観 ゲイル・トゥレンブレイ 16
詩 セレモニー レスリー・マーモン・シルコ 26
コロンブスを発見する 編集部 28
第1章 亀の島・北アメリカから その1―――――33
力の瞬間は今 ロバート・ミラバル 34
ホーガンの向こうの世界 ボイド・ピント 36
最悪の500年 デニス・バンクス 40
私達の道 イボンヌ・スワン 46
居留地の外で育った私
――コロンブスが私に残したもの ゴードン・W・A・オールズ 52
大学でインディアンについて教えて アグネス・ウィリアムス 58
詩 ツォアイ・タレーの喜びの歌 N・スコット・モマディ 76
第2章 亀の島・北アメリカから その2―――――79
イロコイ6カ国連合 編集部 80
対話 ネイティブと白人の生き方 スティーブ・ジョン/アリシア・クック 81
詩 二十世紀アメリカのインディアンは歌う ゲイル・トゥレンブレイ 89
鳥たちに感謝して ジョセフ・ブルチャック 92
ショッキングだった外の世界 ジャニス・クローズ 95
子供への教育とは ケリー・クローズ 98
ロングハウスとキリスト教 フローラ・クローズ 104
スピリチュアル・セルフ ウェイド・プリンタップ 106
創造主の道 ターウェーダーキ 112
偉大なる清めの時 ターハン・クロッシングフィート・クローズ 122
不思議なことにまだ生きている ジェイ・クローズ 128
ワンパム・ベルト 編集部 135
生き残る闘い アリス・パピノー・ドアセンター 136
決断の時 オレン・ライオンズ 140
第3章 亀の島・北アメリカから その3―――――151
創造主への祈り ウィリー・デローム 152
私達の子供達、孫達に… エリザベス・ジャネット・サンダー 154
ポジティブな広がりを スパイク・ビッグ・ホーン 156
インディアンのアイデンティティー ジョアン・ビッグ・クレーン 157
聖なる輪 ブラック・エルク 159
真の歴史と大地への愛 ロイ・ビッグ・クレーン 160
この世界で人間の存在とは… ロン・テリオ 164
母なる地球のために サミュエル・S・デミエンテフ 168
第4章 「現実」から「浄化」への導きを―――――171
ホピ平和宣言 172
ホピからのメッセージ トーマス・バニヤッカ 176
フランク・フールス・クロウが亡くなった… キャリー・ザ・ウォーター 182
獄中インタビュー 自由を! レオナルド・ペルティエ 187
ビッグ・マウンテンは今… ルイス・ベナリー 197
ビッグ・マウンテン・ディネ・ネイション 独立宣言 204
「浄化」に身を捧げる祈りの行動から――ランとウォーク
セイクレッドラン日本事務局 206
「平和と生命への諸宗教合同巡礼」日誌抜粋 208
詩 ワンネス=一体であること トム・ラブランク 214
世界ウラニウム会議開催 編集部 216
世界ウラニウム会議へのメッセージ ダライ・ラマ法王 217
〃 ロバート・レッドフォード 219
デヴィッド・マニャンギ翁が語るヒロシマとナガサキ デヴィッド・マニャンギ 220
第5章 中南米から―――――223
パナマ・インディオ、クナの歴史 オズワルド・デ・レオン・カントゥーレ 225
ニカラグア宣言 平和と生命への諸宗教合同巡礼団 236
グァテマラ・インディオの闘いと力の遺産 リゴベルタ・メンチュー 238
アマゾンでの闘い パウリーニョ・パイアカン 244
第6章 バハンナとシサムの道―――――251
ペシッ――波紋 アイヌより祈りをこめて 萱野茂 252
アイヌモシリに生きて 川村シンリツ・エオリパック・アイヌ 262
「新大陸発見500年」とアイヌ民族 木戸宏 270
白いビーズ 弥永光代 278
ソローからの便り シスター・ジーン・目良 282
本当のバハンナ――映画「ホピの予言・浄化の日」製作の途上から 宮田雪 284
人の「語り」と大地の泣き声 森田ゆり 294
未来への鍵 南研子 298
生徒と共に学び始めて 纐纈好子 302
貧困なる精神 コロンブスの侵略五〇〇年記念とかなしき日本人たち 本多勝一 306
貧困なる精神 スペイン人による大虐殺とアメリカ人の大陰謀と
参院選とPKO 本多勝一 320
コロンブス来米500年に日本を省みる 鎌田論珠 326
声明文 北アメリカ・ノートルダム教育修道女会 326
声明文 1992年4月28日・神戸 世界的調和時代への架け橋をつくるために
先住民族の文化を尊重するアイヌと日本人のネットワーク 328
声明文 1992年8月26日・横浜 サンタ・マリア号を迎えて、私達の思うこと
10月12日の「コロンブス・デイ」を「先住民に学ぶ日」に!
先住民の視座から地球の魂を問う会 331
詩 祈り 山尾三省 334
コロンブス・デイ 日本宣言 1992年10月12日 『夜明けへの道』編集部 336
〃 英文 338
付 録―――――341
亀の島 先住民族関連参考資料 342
ネットワーク紹介 342
先住民族関係 342
地球環境問題関係 343
アイヌ民族 用語説明 344
アイヌ民族 関連参考書籍 346
翻訳者 資料提供・編集製作協力者 一覧 348
初出一覧 349
後書きにかえて 掘越由美子 350
追悼 ロバート・スティード氏 『夜明けへの道』編集部 354
〃 英文 355
1992年10月8日 初版発行 1993年1月20日 第3刷 A5判・357P 図版写真多数掲載
企画監修 掘越由美子 企画進行 本出みさ 編集主幹 大築準 表紙絵 トム松田
本体価格2,700円 ISBN4-915963-07-1 C0039
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